一年目、毎日辞めたかった。
助産師になったら、
ドラマ『コウノドリ』みたいに、
赤ちゃんを取り上げて、
お母さんたちを支えるんだって思ってた。
高校2年生の時、
吉田羊さん見て、
『絶対助産師になる』って決めた私。
勉強も得意じゃなかったし、
看護学校もギリギリだった。
模試も下位。
実習も毎回必死。
それでも、
『助産師になりたい』
その気持ちだけでここまで来た。
だから、
国家試験受かった時は、
人生変わった気がした。
やっとここまで来た。
これから夢だった助産師になれる。
そう思ってた。
でも現実は、
思ってたのと全然違った。
毎日、新しいことばかり。
勤務終わった時には頭パンクしてるのに、
メモは乱雑すぎて、
家帰ってからまとめ直し。
ボールペンで殴り書きしたメモ、
略語だらけで、
後から見返しても意味不明。
『これ何のこと書いたん?』
って自分でなる。
でもまとめ直さないと、
次また怒られる。
眠い。
でも寝れない。
明日の受け持ち気になる。
先輩に言われたこと思い出す。
記録の抜け思い出す。
布団入っても、
頭だけずっと病棟にいる。
夜中に急に、
『あの報告したっけ?』
って飛び起きることもあった。
疾患の勉強もしないといけない。
次の日の受け持ちも調べないといけない。
学生の頃、
『社会人になっても勉強』
って聞いてた。
でもこんなにしんどいとは、
思ってなかった。
全然想像のはるか上を行ってた。
仕事終わってからも、
毎日宿題が終わらない感覚。
しかも、
患者さんの命が関わってるから、
『まあいっか』
が許されない。
ずっと勉強。
容量も悪いし覚えも悪い。
何回してもダメ。
同期は、
なんか普通にできてるように見える。
普通にこなして、
悩みなんてないように見える。
同期が先輩に褒められてるだけで、
勝手に落ち込む。
申し送りが上手いだけで焦る。
記録終わるの早いだけで病む。
『なんでみんな普通にできるん?』
って思ってた。
たぶんみんなしんどかったんだろうけど、
当時の私には、
自分だけ取り残されてるように見えてた。
私は要領悪くて、
プリセプターさんのスピードに
ついていけない。
一個やったら、
一個抜ける。
次これ気をつけるってなって、
それはできる。
でも、
また別の一個が抜ける。
点滴気をつけたら報告忘れる。
報告気をつけたら記録抜ける。
常に何かが足りない。
この繰り返しで、
『一個できたら一個抜けるんだね(笑)』
って笑いながら先輩に言われた。
悪気ないのかもしれない。
でも当時の私は、
その一言だけで、
『私はダメなんだ』
って思ってた。
家帰ってからも、
その言葉ずっと思い出してた。
先輩が10分で終わること、
私は30分かかる。
病棟走り回ってるのに、
気づいたら時間だけ過ぎてる。
ナースコール鳴るだけで焦る。
『なんでこんなにできないんやろ』
って毎日思ってた。
しかも、
助産師として入ったのに、
最初は看護業務から。
正直、
その時は嫌だった。
『早くお産取りたい』
『なんで私はまだ看護業務なん?』
って思ってた。
分娩介助してる先輩見るたび、
羨ましかった。
学生の頃、
あんなにキラキラして見えた世界に、
自分だけ入れてない気がしてた。
SNSで、
同期がお産取ってる投稿見るだけで、
勝手に焦ってた。
今ならわかる。
看護を先に学べて、
本当によかったって。
でも一年目の私は、
そんな余裕なかった。
とにかく、
“助産師らしいこと”
がしたかった。
でも現実は、
怒られて、
ミスして、
落ち込んで、
毎日終わる。
もう何してるのか、
私は何をしたかったのか、
わからなくなってた。
それに、
人間関係もしんどかった。
陰で悪口言われてるの聞いて、
過呼吸になったこともある。
スタッフステーションで笑い声聞こえるだけで、
『私のことかな』
って思うようになってた。
先輩たちが怖い。
出勤前になると、
胃が痛い。
家出る前から、
帰りたいって思ってた。
『今日誰と勤務やろ』
そればっか考えてた。
前日はシフトを
穴が開くほど見る。
『このメンバーだったらこの振り分けかな』
『この先輩なら今日しんどいかも』
そんな妄想大会が始まる。
しかも大体、
悪い予想当たる。
夜勤前なんて、
学生の実習前みたいな緊張感。
でも実習と違うのは、
逃げられないこと。
代わりがいないこと。
学生なら、
実習終われば区切りがある。
でも社会人は、
また明日も来る。
これが終わらない。
『今日乗り越えたら終わり』
じゃない。
また次の日も、
普通に勤務表に自分の名前がある。
それでも、
辞めるのは怖かった。
ここまで頑張ったのに。
やっと助産師になれたのに。
辞めたら、
全部無駄になる気がしてた。
これ、
『ハイキュー』で言ったら、
春高決まった後みたいな感じだった。
高校までは、
『全国行けたらゴール』
って思ってたのに、
実際行ったら、
周りバケモンしかいない。
自分だけ全然通用しない。
看護師国家試験も似てる。
合格した時、
『やっとスタートライン立てた』
って思った。
でも働き始めたら、
そこが本当のスタートだった。
しかも一年目って、
できない自分を毎日突きつけられる。
患者さんの命預かってるから、
『できません』
じゃ済まない。
だから余計に苦しかった。
毎日、
『早く終われ一年目』
って思ってた。
一年耐えたら、
きっと楽になるって思ってた。
新人終わったら、
少しは自信つくと思ってた。
でも現実は違った。
一年目は、
『できない新人』
として守られてた。
本当に苦しくなったのは、
“できて当たり前”
になった2年目からだった。

