高校2年生の時
コウノドリ
を見て
『絶対助産師になる』
そう決めた。
あの頃の私は、公立高校受験に失敗していて、
正直勉強なんて全然できなかった。
周りから見たら、
助産師なんて遠い夢だったと思う。
でも不思議と諦めるって選択肢はなかった。
あのドラマを見た時から、
私の中ではずっと助産師しかなかった。
そこから始まった看護学校3年間。
正直、順風満帆とは真逆。
模試は最下位。
実習も毎回ギリギリ。
テストも赤点スレスレ。
周りがどんどんできるようになっていくのに、
私だけずっと置いていかれてる感覚だった。
何回も思った。
『私ほんまに助産師なれるんかな』
でもここで諦めたら、
高2の時の自分に顔向けできない気がしてた。
なんとか看護師国家試験を乗り越えて、次は助産学校。
やっとここまできた。
ずっとそう思ってた。
でも助産学校って、そんな甘いもんじゃなかった。
実習はパンパン。
ケースレポートは終わらない。
国試勉強もしないといけない。
毎日ずっと何かに追われてた。
正直また始まったって思った。
『しんどいやん…』
って何回思ったか分からない。
でも看護学校の時に自分なりの勉強法を
確立できてたから、
そこだけは少し救いだった。
そして始まった分娩介助実習。
学内では何回も練習してきた。
模型を使って
何回も何回も手順確認して
先生に見てもらって
たぶんかなり練習した方だったと思う。
でもずっと思ってた。
『いや絶対これ本番違うやろ』
って。
模型相手にできるのと
実際の人を相手にするのは違う。
たぶんこれは看護学生なら分かる。
採血の練習ってモデル腕だとできるのに、
初めて患者さんにする時って
急に手震えるじゃん?
『え、いつもできてたのに』
ってなるあの感じ。
まさにあれだった。
そしてその日がきた。
分娩介助1例目。
日勤。
夕方。
担当は初産婦さん。
お産は長かった。
待ってる時間もずっとソワソワしてた。
『え、ほんまに私やるん?』
『大丈夫かな』
『失敗したらどうしよう』
何回も頭の中でぐるぐるしてた。
今思えば笑えるけど、その時は全然笑えない。
私の体は自分でも分かるくらいガチガチ。
顔もたぶん固まってた。
いざ始まると
やっぱり全然違った。
頭では手順分かってる。
何回も練習した。
イメトレもした。
でも実際始まると違う。
次何だっけ…
いや待ってこれで合ってる?
次これやんな?
頭の中ずっとそんな感じ。
正直必死すぎて細かい記憶あんまりない。
ただひたすら必死だった。
そしてその瞬間がきた。
赤ちゃんが生まれた。
私はそのまま胎盤娩出まで介助した。
全部終わったあと、
指導者さんに言われた。
『初っ端で頑張ったね』
あの言葉はたぶん今でも忘れない。
でも不思議だった。
もちろん感動してた。
だってずっと憧れてた仕事だったから。
高校2年生の時に
コウノドリ
を見て
『絶対助産師になる』
って決めた。
そこから看護学校3年間。
そして助産学校1年間。
全部繋がって、
今、自分の手の中に命がある。
初めて学生の時に、
母子手帳に名前を書かせてもらった時、
実感しかなかった。
その瞬間思った。
『あぁ…憧れてた仕事だ』
って。
やっとここまできたんだって思った。
正直ちょっと涙出そうだった。
でも堪えた。
やっと助産師としてデビューできた。
そんな感覚だった。
でもね、
次の瞬間
違う感情がきた。
『怖い』
だった。
それまで私は、
助産師って、
赤ちゃんを取り上げる仕事だと思ってた。
もちろん感動する仕事だとも思ってた。
でもあの日改めて思った。
助産師って、
赤ちゃんだけ見てる仕事じゃない。
お母さんもいる。
命が2つある。
2人分ある。
看護学生の時
『命を預かる仕事』
って何回も聞いてきた。
実習でも何回も言われた。
国試でもいっぱい勉強した。
でも正直、
本当の意味で理解したのって
あの日だったと思う。
助産師って
2人分の命を預かる仕事なんだって
再認識。
母体も守らないといけない。
赤ちゃんも守らないといけない。
その責任って
想像以上に重かった。
あの日初めて思った。
助産師って
『なりたい仕事』
じゃなくて
『覚悟が必要な仕事』
なんだって。
夢って、
叶ったらゴールだと思ってた。
ずっとそこを目指して頑張ってきたから。
でも違った。
夢って
叶った瞬間から責任が始まるんだって知った。
今振り返ると、
あの日は夢が叶った日でもある。
でも同時に
助産師としての重みを知った日でもある。
勉強できなかった高校時代。
模試最下位だった看護学生時代。
必死に食らいついた助産学生時代。
全部意味があった。
全部繋がってた。
今でも思う。
あの日取り上げた命が
私を本当の意味で助産師にしてくれた。
そしてたぶん一生忘れない。
初めてお産をとった、あの日のことを。
初めて取り上げた子はもう今年5歳。
月日ってはやいね。

